同じ寮に暮らしてる、ってだけで月に一度、鍋パしたり、たこパしたり。そんな関係になって半年。今月は、ハロウィンパーティーだ。男だけで。
一週間ほど前、主催兼会場提供をしてくれてる1階角部屋の安藤が謎の箱を持って現れた。ハロウィンパーティーと言えば仮装だろ、とのこと。箱の中には小さく折りたたまれた紙。そこに指定された仮装をそれぞれして来い、とのこと。
人数分以上の紙。何を書かれているのか、恐ろしい。変なのだけは絶対嫌だと思いつつ、一枚引き当てる。
『ドラキュラ』
安藤に見せる。
「定番だな。だが、だからこそ難しい」
眼鏡をきらりと輝かせ、不敵に笑う。
そうなのか? 普通に黒っぽいの着て、100均で仮装アイテムそろえりゃなんとかなるだろ。
「安藤は何なの?」
尋ねれば、その場で引いてくれた。
『狼』
シンプルに一文字。狼男ではなく、狼。ってことは着ぐるみだろうか。
「当日をお楽しみ」
マッドサイエンティストみたいに笑いながら、参加料を徴収して去っていった。
当日、いつもの時間にいつもの部屋に集まった顔ぶれ。安藤自筆の男らしい筆文字『友達も恋人もいない男たちの集い』垂れ幕に少しかぶって、『ハッピーハロウィーン』の看板。やたら可愛らしくメルヘンチックにポップな書体で書かれている。安藤は何をやらせても器用だが、そもそもこの集いの主催者である。
集まったいつものメンバー。藤沢、大倉、小牧、米村。誰もがもう少しコスプレに気合入れろ的な低レベル。だが、一番の問題は主催者である黒エプロン姿の安藤。普段と何も変わりない。
「安藤、仮装は?」
尋ねた声に、安藤はにやにやと笑いながら、エプロンをとった。胸のところに大きく「男は狼」と書かれたカットソー。
「……それ、仮装?」
「仮装だろ」
思ったより受けなかったからか、
「それよりお前らの恰好はどうなんだよ、幽霊っていうよりKKKつだろ、ドラキュラってよりただの黒づくめ、フランケンは落書きしてるだけ、ミイラ男ならもう少し包帯巻いて来い」
言いたいこと言って、勝手にドリンクを開ける。
それぞれ席につき、ヤケクソ気味に「ハッピーハロウィーン」の声と共に料理を食べ始めた。
お題配布元:
エソラゴト。さま →ハロウィンで10題
http://eee.jakou.com/
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