まるでヘンゼルとグレーテルだ。
私はそう思いながら、道端に落ちていたビー玉を拾い上げる。これで7個目。ポケットに入れ、またしばらく歩く。ころころ、と今度は数個まとめて落ちていた。
引きずられ、袋の底の穴が大きくなってきたのだろう。キラキラ輝くガラス玉は幼い子供たちにとって、宝石のようなものなのだろう。様々な色、模様、少しの違いでそれらに価値を見出し、興奮している様子は微笑ましい。
目の前の公園に辿り着く。大人の足ならばたいした距離じゃない、幼児向けの遊具が置かれた小さな公園。けれど子供たちからすれば、そこは遊園地にも代えがたい遊び場であり冒険基地。
「ほら、帰るよ」
「チカちゃん。まだ来たばっかりだよ」
小さいくせに減らず口はきけるんだから。
「お昼寝の時間でしょ。フウタ君、カズ君がお昼寝してくれなきゃ、ママに怒られるんだけど」
「ママいないもん」
「お仕事だもん」
幼児は可愛い反面、小憎ったらしい。なんせあの姉の子である。
「ママに言いつけるよ」
「言わないよ、チカちゃんは」
妙に確信めいた二人の言葉。近寄ってきた兄のフウタ君から買収の密談。
「チカちゃんに良いものあげるから、ママには内緒ね」
幼児の内緒話はなぜにくすぐったいのだろう。
とても大切なもののように渡された1個のビー玉。
「大人はこれ、食べるんでしょ?」
残念。
この子たちにはまだビー玉とキャンディの区別がつかないらしい。
きっと、義兄さんがまた禁煙し始めたのだろう。
お題配布元:
エソラゴト。さま →ハロウィンで10題
http://eee.jakou.com/
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