忍者ブログ

30分で創作小説

誤字脱字意味不明等々あってもそのまま公開。あとで手入れしたものをサイトに載せる予定

  • 2024年11月24日

[PR]


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • 2019年11月10日

小さな小さな奇跡


最悪のクリスマスイブだ。
 その場に集っている誰もが思っていても、口には出さず、アルコールと料理を口に運んでいる。
 クリスマスイブだって言うのに、男だけ。しかもメンバーはすでに学生ではない。学生時代の同窓会だ。
 忘年会やってる奴らもいるから大丈夫だよ、と言った幹事の言葉は大外れで、店の中はリア充だらけ。周囲との温度差が激しい。
 早々と二軒目へ。入った店がまた同じ状態で、アルコールが美味しく呑めない。この街にはリア充しかいないのだろうか。
 三軒目を探している途中で、
「今日はもうやめよう。心が痛くなる」
 誰かの提案でお開きになった。いつもなら時刻が変わるまで飲んでいるってのに。

 駅前でタクシーが捕まらず、歩いて帰ることにした。いつもほど飲んでないから、酔ってもない。
 いつもは通らない道を通り、大きく迂回して歩く。イルミネーションされた大通りと違い、街頭だけが明かりとなっている路上に恋人たちの姿はない。
 明かりがついているビルをみる。クリスマスイブだってのにまだ仕事をしているなんて、気の毒なことだ。俺はまだましなのかもしれない。
 視線をあたりに向けていると、どうやらその明かりの一つが自社のオフィスな気がしてきた。
「まだ残ってる人間がいるのか?」
 いつも通り20時頃、みんな帰ったはずなのに。時刻を確認すると23時を過ぎている。
 不審に思いながら向かう。
 
 オフィスから奇声が聞こえた。
 なんだ? 誰だ?
 こんな声を上げる人間はいない。
 コピー機の前に怪しい女性の後ろ姿。乱れた髪、服装。呪文のように何かを呟きながら、コピー機を揺すっている。壊れたらどうするつもりだ。それより、その服装――
「まだ残ってたんですか?」
 声を掛けたら、頭が沈んだ。
 髪や服装を整えたのだろう、シミズフミエは立ちあがる。恥ずかし気に顔を真っ赤に染め、どもりながら言う。
「ど、どうして、あの……どうしたんですか?」
 どう見ても慌てている。彼女らしくない。実に可愛らしい。

お題配布元:Discoloさま →クリスマス5題
http://discolo.tuzikaze.com

関連小説「24日の24時
PR


<< | 最初 | >>

  • © 2019- 空色惑星 All Rights Reserved.
  • 忍者ブログ
  • [PR]