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30分で創作小説

誤字脱字意味不明等々あってもそのまま公開。あとで手入れしたものをサイトに載せる予定

  • 2024年11月25日

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  • 2019年11月15日

 失くして気付くんじゃ、遅すぎるんだ、何事も。


失くして気付くんじゃ、遅すぎるんだ、何事も。

 ポスターに書かれた文字と、その側で力強い微笑みを浮かべた腕を組んだ男の半身。今日は私が先生と呼ぶ人物の講演会だ。
 講演時間になる前に、秘書というか助手のミナギさんがやってきて、壇上に立った。
「本日は皆様、遠路はるばるようこそお越しくださいました。ですが、皆様には大変申し訳ないのですが、今回の公演は先生がいらっしゃらないため取りやめさせていただきます」
 その声に周囲がざわめく。地元民は良いものの、私なんて電車で一時間以上かけて来たっていうのに、どういうことだろう。先生になにかアクシデントが?
 騒然とし始めた。ミナギさんのメガネがギラリと光った。誰もが口をつぐんだ。ミナギさんは普段おっとり天然さんを売りにしているだけに、本性が現れた時は怖い。ほとんどの人が知らないことだけど。
「あのバカと書いて上司、もしくはみなさんが先生と呼んでいる大馬鹿野郎は今日はまいりません。今日はお帰り下さい」
 ミナギ女史が重ねるように言い、パンパンと手を打つ。
「もう少し詳しく説明してくれんか」
 手を上げたのは最年長のクワタさん。確か地元民だったから、私に比べ精神的ダメージが少ないのだろう。
「細かな説明をしては、みなさんの精神的ストレスが増加するかと配慮したのですが、失礼いたしました」
 優雅に一礼。この人、こういう大人な態度取れるのか。普段がフレンドリーというか、傍若無人というか……それだけにちょっと新鮮。
「あのボケ――失礼、つい本音が。今朝、先生は眼鏡がないことに気づき、慌てて家探ししたものの見つからなかったそうです。ご心配なく、アルコール依存症一歩手前の酒好きですから、これはたまにあることです。昨夜一緒に飲んでいた人たちに連絡をとってみるも、誰も覚えていないということで、仕方なく、予備の眼鏡をする事にしたそうです」
「それが見当たらなかったってことですか?」
 眼鏡がないから来れないなんて理由だったら、連絡くらいしたらいいのに。
「話はまだ続きます。探したものの先生の予備の眼鏡も、予備の予備の眼鏡も、コンタクトもなかったそうです。ですが、先生はあきらめず出立しようとなされました」
 皆がざわめく。やはり先生は無責任じゃなかったのだ。
「家を出ようと靴を履いた時、靴の中にメガネが入っていたようです」
 何故そんなところに。酔っぱらいの思考回路はわからない。
「ちなみにコンタクトは郵便受けにあったと連絡がありました。眼鏡を探すのに時間を取られたこともあり、家を出るのが遅れた先生でしたが、駅についたところで財布がないことに気づかれました。あと、スマホも持っていなかったそうです。慌てっぷりが良く分かりますね」
 気づかず駅までって、もしかして走ったのだろうか。だとしたらお気の毒なことだ。
「それらを取りに帰ろうとしたところで、不審人物として警官に呼び止められました。

「さあみなさん、復唱してください。『失くして気付くんじゃ、遅すぎるんだ、何事も』では、本日はお疲れさまでした」

お題配布元:リライトさま →組込課題・文頭
http://lonelylion.nobody.jp/
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