昼休憩。コンビニで買ってきた弁当を食べながら、同僚がふと思い出した様子で、
「そういや昨日、不思議なことがあってさ」
「なんだよ」
「ほら、ハロウィンって今月の末だろ」
そう言われれば、そうだ。ハロウィンが一般化し始めたのはここ数年のこと。子どもの頃にはそんな単語さえ聞いたことがなかった。お菓子がもらえるなんて話、子どもが聞いて忘れるわけがない。
黒とオレンジと紫と。魔女にお化けにドラキュラに。店先や家々に飾り付けられ出したのはいつからだろう。ハロウィンって元は西洋の収穫祭のはずだ。日本の田舎でやるならともかく、なんで都会の若者中心に盛り上がってるのか意味がわからない。
「昨日の夜、晴れてる予報だったのに薄暗かっただろ」
「昨日の夜」
声に出して繰り返してみるが、わからない。仕事から帰ったら食事してお風呂入って、趣味に没頭する時間があれば楽しい日常だ。外に出ることなんて、お使いくらいしかない。
「俺、趣味が天体観測なんだよ」
「意外にロマンチストだな」
「いや、小さいころにサンタにもらった天体望遠鏡がきっかけでハマっちゃって」
「金のあるサンタだな」
「本当は父親が欲しかったのを俺にプレゼントの体で買ったらしんだ。かなり良いやつ。俺がいらなきゃ、仕方ないから自分で使う算段で」
「サンタは知能犯か」
「ま、それはいいんだけど。昨日、天体観測してたらさ。星がおかしいんだ」
「おかしい……?」
僕はその言葉に反応する。まだ星空は綺麗なはずだ。先日、姉がはたきを手に、屋根裏に上っていくのを見かけている。
「なんていうか、メルヘンチックなピンクとか水色とか黄緑とか、角の丸い星型ってあるだろ」
「女の子のおもちゃに入ってるような」
「そうそう。それそれ。星がさ、そういうふうに見えるんだよ」
俺はどこかでそれを見た覚えがある。それは台所のテーブルの上にあったシールじゃなかっただろうか。姉がハロウィンの飾りつけにと買ってきたグッズの中で使われなかったもの。
「それは……疲れてるんじゃないか」
出てきた言葉はありふれたもので。
同僚も頭を掻きつつ、
「今日は早めに寝るよ」
「ただいま、姉さん」
帰宅してすぐ、屋内にいる姉を探す。
姉はよいしょと屋根裏から降りてきた。
「おかえり。どうしたの?」
僕は屋根裏に急ぐ。
そこにあったのはシールを貼られた星。そして新たに飾り付けられたハロウィングッズ。
「なんで夜空に飾り付けしてんだよ」
「あら、ハロウィンよ」
「ダメだよ」
「ハロウィンはお化けのお祭りだから大丈夫よ」
姉はにこりと笑い、。
「これに気づく人がどれほどいると思う?」
お題配布元:
エソラゴト。さま →ハロウィンで10題
http://eee.jakou.com/
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